那古野みつ林
那古野を誇りに
“一魂一味”の姿勢で
季節を感じる一皿を提供
「あまり賑やかな街ではなく、静かな場所で隠れ家的な店を出したかった」と那古野に出店した理由を話す主人の三ッ林学さん。ここに決める前も、市内東部の街を検討していたという。「でも、ここは名古屋駅から近くて都心なのに古い町並みが残っているでしょ。その珍しさがよかった。将来性もあるしね」。
京都の名旅館『柊家』で厳しい修業を積んだ後、いくつかの店で研鑽。最後はカウンターがメインの割烹で腕を鳴らした。多くのお客様を相手にする場所から小さな店へ。小さな店からステップアップしていくのとは真逆の、その個性的な修業スタイルは最初から自分の計画の中にあったものだった。「カウンターの店をしたかった。どのお客様にどこまで料理が出ているか、料理は冷めていないか、おいしく味わってもらっているか。自分の目が行き届く範囲でお客様の表情をうかがいながら、できたてを味わってもらいたいと思っていたのです」と三ッ林さん。「忙しい雰囲気ではなく、ゆっくりと過ごしていただける店にしたいと考えていました」。
小さな店だからこそ
一皿一皿と向き合える
念願叶って約2年前にカウンターがメインの『那古野みつ林』を開店。ここで三ッ林さんは “一魂一味”の日本料理を提供する。「お客様に対するのと同じように、どんな料理にも正面から向き合って心を込めたものに仕上げたい」と三ッ林さん。その思いは季節感あふれる一皿ごとに表現される。例えば節分の時期の八寸は、稲荷の狐を蕪で表現し、狐が好むといわれるからしで菜の花を合える。鬼が嫌うという柊の緑もアクセントに。これら一つひとつについて三ッ林さんから話を聞くのも楽しく、まさに五感で季節を体感できる一皿だ。「楽しかった、この時期にこれが食べられて幸せだったといわれると嬉しいです。まさに料理人冥利につきますね」。
また漬け物から水菓子まで徹底して手仕事にこだわるのも、「小さな店だからできること」と三ッ林さんはいう。「自分の味をすべての皿で表現し、それを楽しんでもらう。お客様が何回転もするような店じゃこうはいかないですよ」。ここにもやはり、“一魂一味”が息づいているのである。
これらの料理同様、店名の頭に“那古野”を入れたのにもこだわりがある。「例えば京都の祇園は店名の前に祇園と名付ける和食屋が多く、祇園というひとつのブランドができあがっている。那古野にももっと和食の店が集まって、街全体で盛り上がっていけたらと思っています」と三ッ林さん。「あの街に行けば何かおいしいものに出会える、楽しい時間が過ごせるという場所に育ってもらいたいと思っています。そのために、私自身も那古野の街を誇りに思って頑張っていきたいと思っています」。
さらに今後は、自分がこれまで培ってきた技や思いを、後輩たちに伝えていきたいとも話す。「手間を惜しまず、お客様に喜んでもらえる料理を提供する心と技。これらを継承していくことが、これからの私の大切な仕事だと実感しています」。
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- 那古野 みつ林
なごの みつばやし - TEL : 052-533-5530
- 住所 : 名古屋市西区那古野1-22-9 1F
- 営業時間 : 12:00~13:30(入店)、
17:30~20:30(入店) - 定休日 : 日、第3月
- 那古野 みつ林