那古野とイタリアン

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那古野で愛される
イタリアンの名店が
新たに始動

 那古野エリアを歩く人が今のように食事や観光目的ではなく、通勤で通りすがるだけの人がほとんどだったという2014年にオープンした『ecco produzione di shu』。それから7年、那古野にあるイタリアンの名店としてその名を押し上げたシェフの浅井俊行さんが、店名を『ecco』と改め、2021年9月より新たなスタートをきった。
料理を作る香りや音など五感を刺激するオープンキッチンから続くカウンターと客席がひとつとなった一体感のある空間、季節感あふれる料理とゲストに寄り添う心づくしのもてなしのクオリティはそのままに、新たにシェフであり、ソムリエの資格を持つ窪田理人さんも加わった。

 浅井さんは、北イタリアを中心に計4年間を過ごし料理に磨きをかけた持ち主。以前、提供していたパスタランチコースを止め、ランチタイムもコースのみにすることで、鮮度を大切に吟味した日本の食材とイタリアからの輸入食材を使い、日本人の口に合うイタリアンに仕立てる浅井さんの本格的な料理を、ディナータイムに訪れることが難しい人も楽しめるようになった。

 この日に登場したコースの一例は、契約農家から届くフレッシュな葉物と、焼いたり、蒸したり、醸したり、調理法を変えることで素材のおいしさを引き出した根菜に、温かいエメンタールチーズのスープをかけていただく “農家のサラダ”。北海道産の濃厚な生うにとトマトの酸味のバランスが絶妙な“生うにとフレッシュトマトのスパゲッティ”は、浅井さんの卓越した技術が際立つ一品だ。鮮やかなグリーンが印象的なグリンピースソースで味わう肉料理は、炭焼きされた熊本県産赤牛のシンタマの赤身のおいしさと、ソテーした生のポルチーニ茸の食感がなんとも楽しいひと皿。さらに、注目なのが “フォアグラのスカロッピーナ”だ。フォアグラをマリネした後に燻し、薄くスライスして富有柿や洋梨、マンゴーなどの季節のフルーツと一緒に味わうというもの。口の中でとろけるフォアグラのまろやかな甘み、フルーツの酸味が響きあう味わいは、ここでしか味わえないスペシャリテだ。

 これら、浅井さんの料理に合うワインを提案してくれるのは、イタリアのナポリとフリウリ州で2年半、料理の研鑽を積んだシェフであり、ソムリエの資格を持つ窪田さん。「以前の店ではイタリアのワインを中心とした品揃えでしたが、今はギリシャやスロベニア、日本など皆様にあまり知られていない、意外性のあるワインを多く仕入れています」とのこと。料理とワインとの組み合わせの妙はもちろん、ワインごとのストーリーが聞けることで、会話を盛り上げるエッセンスとしてゲストにも喜ばれている。

満足度と季節感を大切に
チャレンジしながら
研鑽進化し続ける

 「独立するにあたって他の場所を考えたことも正直ありました。しかし、那古野にある飲食店の方々との信頼関係も強く、とにかく一緒に頑張ろうと思えるこの場所でやっていこうと決めました」。そう話してくれた浅井さんは独立後も昔と変わらず、今まで訪れてくれたお客様の結婚記念日などのハレの日やプロポーズなど一生に一度の時に選んでいただけるということが大きな喜びであり、日々仕事をする上での原動力となっているという。

 素材と真摯に向き合う浅井さんが日頃大切にしているのは、「日本と同じように四季のあるイタリア料理を提供していくうえで、季節を感じてもらえるひと皿に仕上げること」。前菜からデザートに至るまで料理がおいしいのは大前提。お二人で利用するのにぴったりな個室を備えた木のぬくもりあふれる温かな空間、どんなシチュエーションでのご来店なのかも予約時に把握するなどシーンに合わせての最適なサービスを心がけている。「これら全てにおいてご納得いただけたかどうかということが満足度にもつながると思っています」。このことを常に念頭に置き、「那古野というこの地に根付き、より皆様に楽しんでいただける店を今後も目指し、この先もさまざまなことにチャレンジしながら進化を続けていきたい」と未来への思いも語ってくれた。