四間道レストラン
MATSUURA
蔵×レストランの
先駆け、瑞々しい
シェフの感性が
料理と街を繋ぐ
「この土蔵は380年ほど前に建てられたもの。初めて出会った時は大幅な手入れが必要な状態でしたが、見た瞬間にレストランの風景が浮かんだんです。それに、那古野という場所は名古屋駅から近いのに静か。緑が多い田舎で育ってきたこともあり、この場所に惹かれました」。そう語るのは、那古野で『四間道レストランMATSUURA』を営む松浦仁志さんだ。
四間道に佇む白い土壁が目印のこちら。初めて訪れた人は、入口を迷うかもしれないほど看板はひかえ目。看板や建物を照らすライトも必要最小限だ。「レストランをオープンさせた当初は、外壁にライトをもっと多く照らす予定だったのですが、那古野という静かな町にふさわしくないと思い、現在の状態にしました」と松浦さん。
店舗入口へと導いてくれる中庭のアプローチは、松浦さんも職人と一緒になって手掛けたもの。ゆるやかに弧を描くそれが黒色なのは、コンクリートに炭を混ぜているからで、さらに雫の模様を施してある。行き着いた先にある、背の低い引き戸を開けると目の前に広がるのは天井の高いレストラン空間。和の趣の中で、西洋のアンティーク家具やペンダントライトは、ずっとここにあったかのようにしっくりと馴染んでいる。「最初は床の張り替えから漆喰塗りまで、かなりリノベーションをしました。そのあとも毎年少しずつ手入れをしているんですよ」。建物を持ち主から預かり、守り人としてレストランを営む松浦さんは、蔵を愛おしそうに眺めながら教えてくれた。
那古野という地に
思いを込めたシェフの
スペシャリテ〝テリーヌ”
この土蔵を活かしたレストランのスペシャリテはテリーヌだ。その理由は、テリーヌの語源はTerre(テール)で、大地という意味を持つことに関係している。「テリーヌは、もとはすり鉢状の土鍋で作ったと言われています。当店は土壁を何度も塗り重ねた土蔵です。”土”というつながりを大切に、スペシャリテをテリーヌとしました」と松浦さん。テリーヌはランチ、ディナーとも、季節ごとに食材を変えて登場する。定番は野菜のテリーヌだ。 用いる野菜は、三重県津市の自然農法で栽培された無農薬野菜が中心。これを季節ごとに野菜を変えて構成するのだが、その調理法が興味深い。18種類の野菜を和風だしでおひたしにしてテリーヌ型で固め、味付けはイタリア・シチリアの塩と、あとは野菜の旨みだというのだ。地元で採れた食材を大切に扱う松浦さんならではの一皿。この日はほかに、丸ごと1羽さばいて作る名古屋コーチンのテリーヌ、国産とフランス産を10種類用いたキノコのテリーヌもあり、どれにしようかと迷ってしまう内容だった。
松浦さんはレストラン空間で活躍するだけではない。「円頓寺秋のパリ祭」に出店したり、「とまとまつり」の発起人となったり、那古野界隈を盛り上げる活動も行う。「イベントを通じて、この場所を盛り上げていきたい。そして、いつか那古野の名物になるようなものも作りたいですね」。松浦さんは静かに、しかし力強く語ってくれた。
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- 四間道レストランMATSUURA
しけみちレストランマツウラ - TEL : 052-720-5631
住所 : 名古屋市西区那古野1-36-36
営業時間 : 11:30~14:00(LO00:00)、
17:30~20:30(LO00:00)
定休日 : 月、第3日
http://www.shikemichi.jp
- 四間道レストランMATSUURA