熟成古酒
エルヴァージュ
Élevage
歴史を重ねた
那古野で、
年月を重ねた
熟成古酒の魅力を
発信する
歴史を重ねてきた古民家長屋をリノベーションしたバー『エルヴァージュ』。店名はワイン用語で、醸造後に樽やタンクに入れ、数年熟成させる作業を意味する。その名からワインバーを思い浮かべるかもしれないが、予想に反して同店は熟成古酒に特化した日本酒バーなのだという。
オーナーの松浦仁志さんがこちらをオープンさせたのは、「熟成古酒の魅力をもっと広めたい」との思いから。そして、長い年月を重ねた日本酒を楽しむのに、歴史を経た建物がふさわしいとの考えから選んだ場所が那古野だ。
松浦さんの思いを受け、店長を務めるのが長谷川高士さん。柔らかな笑顔が印象的で、会って間もなくホッと肩の力が抜けてしまう、不思議な魅力の持ち主だ。
「カウンターでのお客様との距離感はほどよく、ダイレクトに感想が聞けるのは嬉しいですね」。そう話す長谷川さんは、店舗がある那古野へは毎日自転車で通っているのだという。「名駅の近くにありながら、ここはとても静か。この空気感が好きです。自転車で走っていて、たまに猫が歩いているのを見かけると思わず止まって見てしまうほど和みます。それに、この町には尊敬できる方がたくさんいます。自分のことだけを考えているのではなく、下町の景観を保とうという意識が強い。住民の方、店舗を営む方の垣根なく、那古野という場所と真摯に向き合っていると感じますね」−−終始笑顔の長谷川さん。瞳の奥が一瞬真剣味を帯びた。
ふくよかで奥深い
熟成古酒は、
どこかこの街と似ている
ケヤキの一枚板カウンターが目を引く店内には、ガラス棚があり、熟成古酒がずらり。それはほんの一部で、70種類以上のストックを持つという。熟成期間は3年ものから、1970年代に醸造されたものもある。また、熟成期間や方法により引き出された特徴を、よく感じられるように5種類のワイングラスとオリジナル酒器から最適なものを提案する。
また温度は常温もあれば、8℃や20℃で提供するものもあるという。例えば、関谷醸造の「愛知蓬莱泉 ROKU 山廃純米十年古酒」は10年以上常温熟成されたもので、凝縮感を特徴的な酸味が全体を締める一杯。20℃という温度帯でふくらみのあるブルゴーニュグラスで味わえば、はちみつのような香り、梅酒のニュアンスを感じられる。「意外かもしれませんが、熟成古酒は食事ともぴったり合うんです」と、これら熟成古酒の旨味をさらに際立たせる肴も用意されおり、新たな魅力との出合いに一役買っている。
先般行われた日本酒飲み歩きイベントでは、和歌山県の蔵元がやって来るなど、遠方からの客も多いこちら。「どの方からも、『すてきな場所だね』と、那古野の景観を気に入っていただけるんです」。嬉しそうに話す長谷川さん。
奥行きのある味わいが魅力の熟成古酒はこの街とどこか似ている。どれだけ見知っているつもりでも、角度を変えればさらなる魅力が湧き出てくる。これからも那古野と向き合いながら、熟成古酒の魅力を発信していきたいという。
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- 熟成古酒 エルヴァージュ
Élevage
じゅくせいこしゅ エルヴァージュ - TEL : 052-710-9798
住所 : 名古屋市西区那古野1-18-3
営業時間 : 18:00~25:00
定休日 : 日、第3日
http://www.elevage.nagoya/
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