那古野とオーダースーツ

file09

DEFFERT

自らの世界観を
表現できる那古野で
自らの経験を生かした
「他にはない」
テーラーを

 「この場所を見た瞬間、自分が目指す世界観を表現できる場所だと思いました」と話す店主の田中恵介さん。以前も八事でオーダースーツ専門店を行っていたが「出張訪問より来店されるお客様が増え、お客様の満足度向上のために移転することにしました」。そうにこやかに話す田中さんは、もともとビジネスの最前線で活躍する商社マンだった。現在の仕事における原点や哲学も当時の経験にあるという。
 「その頃は大手企業を担当していましたが、プレゼンの時は見る者を惹きつける素材や色味を取り入れた装いに。信頼を感じてもらいたい時には、清潔感あるオーソドックスな装いを意識するなど、服装をコミュニケーション手段に活用していました」。当時もオーダーメイドで自身のスーツを作っていたが物足りなさを感じていたという田中さん。「トレンドだけではなく、もう少し踏み込んだ提案をしてもらえる店があったらと考え、それなら自分でやってみようと思ったのです」。

 店内は天井が高く、モダンで落ち着いた雰囲気。まるで酒を選ぶように生地やボタンを選べるバーのような広いカウンターなど、粋な遊び心も心憎い。ここでまず田中さんが行うのは、丁寧なカウンセリング。「ビジネススーツはその人にとって戦闘服。だからこそ業種や立場、好みをはじめ、どんな時に着たいのかなどをじっくりと伺いながら、デザインや生地を提案します」。生地はイタリアやイギリスのものが中心で約1500種。ボタンなどのアイテムも豊富に揃える。「名古屋のビジネスシーンのトレンドを追いつつ伝統も押さえた上で、まずその人に似合い、その装いを“どこで、誰と、何のために着る”のか、会話から導き出される最適解である『その人が着るべき一着』を手がけたいと考えています」。もちろん、会社や自宅へ出向いてのオーダーにも対応。きめ細やかな仕事が評判を呼び、リピーターも増え続けている。

テーラーを訪れる人の
人生に寄り添い
ともに歩き続けていく

 田中さんはお客様とより近い関係で一緒に服を作るために、常に相手がリラックスできる雰囲気を心がけている。「服を作りに来たというのではなく、私自身に会いにきていただけると嬉しいですね」。初めてのお客様は2時間以上かけて話し、相手の要望を引き出す。

 時には、病と闘う小学校の恩師にスーツを贈りたいというお客様の要望に応え、その人の病室まで出向いて採寸をしたこともあるという。また結婚式用のスーツを手がけた夫婦が、数年後に子どもの入学式に着るための礼服を依頼するなど、長年にわたってつきあうお客様も。「この仕事は人のドラマに寄り添うことが多い。だからこそやりがいがあります。今後も、お客様が自分に自信を持てる最高の一着を作りたい」と笑顔を見せる田中さん。そのためには技術や知識もさらに研鑽していくと目を輝かせる。また自分が好きな那古野のことももっと世間に広めたいとも。「大人のためのおしゃれな那古野の一面を、より多くの人に知ってもらえたら嬉しいですね」。
 自らの経験を元に、親身になって寄り添い、服装を通して店を訪れる人の人生に花を添える田中さん。那古野の街は、そんな田中さんとお客様の出会いの場所であり、新たなドラマの出発点となっていく。

  • DEFFERT
  • DEFFERT
  • DEFFERT
    デフェール
    TEL : 052-710-4628
    住所 : 名古屋市西区那古野1-36-52
    完全予約制