喫茶
ニューポピー
心を込めて淹れるコーヒー
歴史を受け継ぎ
喫茶の文化を未来へ紡ぐ
扉を開けると、鼻腔をくすぐるコーヒーの豊かな香り。新しい店内なのにどこか懐かしく、そこかしこにレトロ感がある。老若男女、誰にとっても居心地のいいこの店は、マスターの尾藤雅士さんと、尾藤さんの母でチーフの孝子さんをはじめ、スタッフ全員が力を合わせてお客さまを迎えている。
「父と母が名駅で約40年以上『喫茶ポピー』を営んでいました。私は閉店前の最後の3年間だけ継いだのですが、その時からコーヒー豆の魅力にはまったのです」と話す尾藤さん。仕事で知り合った人から焙煎のいろはを教わり、2011年にはコーヒー豆焙煎卸問屋『BEANS BITOU』を立ち上げる。その後、伏見に『喫茶神戸館』もオープンした。「父と母の店はいわゆる純喫茶でお客さまも年配の方が多かった。同世代の人たちがしゃれたカフェを開き、若い人々が訪れるのを見て、自分もそんな店をやりたいと思ったのです」。
ところが、実際にビジネス街で喫茶店を営むことは、尾藤さんの理想と大きくかけ離れていたという。「お客さまはみんな忙しく、コーヒーをゆっくり楽しむ時間がない。ハンドドリップで丁寧に淹れる一杯より、ドリンクバーのようなスタイルが好まれました」。せっかく心を込めて淹れたコーヒーを、ゆっくり楽しんでもらいたい。そう思った尾藤さんは新たな場所を求めて20件以上探し歩き、那古野に出会った。
曽祖父と父への思い
深い縁と人々との出会いに
“招かれて”那古野へ
実家が円頓寺の檀家だったこともあり、幼い頃から那古野界隈によく足を運んだという尾藤さんは「実は、それだけではない深い縁を感じています」と話す。「かつて大おじいさんが那古野の五條橋付近に住んでいたこと、その大おじいさんと同じ場所に『喫茶ポピー』の主であった父が眠っていること。こうしたさまざまなことが自分の中でつながって、那古野に“招かれた”感じがしました」。
多くの人々や出来事と出会う中で、古き良きものや歴史を守ることの大切さに気づいたという尾藤さんは、「カフェ」ではなく「喫茶」の文化を未来へつないでいこうと決意。「父の店の名前に“ニュー”をつけ、古き良きものを受け継ぎながらも、新たなものを生み出すという気持ちで頑張ろうと思いました。また『喫茶ポピー』のママだった母に、もう一度最前線で頑張ってほしいという思いも込めています」と尾藤さんは笑顔で話す。
「小さな店だからこそ、自信を持っておいしいコーヒーを提供したい」と尾藤さんがこだわるコーヒー豆は、東ティモール・サントモンテの契約農家から仕入れ、直火式の焙煎機で焙煎する。「直火式は作業効率が悪いですが、他の店とは違う味わいを出すことができます」。豆の香味をじっくりと引き出し、他の豆とブレンドすることでクセをなくし、味わいを深くする。コクと香り、程よい苦味と酸味のあるポピーブレンドは、尾藤さん渾身の一杯だ。
店ではコーヒー豆の販売も行い、特に『物語珈琲』に力を入れる。「結婚式の引出物に、と考えたコーヒーです。2人の出会いやエピソードを伺い、その物語に合った豆を選んでブレンドします。2人の歴史が未来につながる世界でたったひとつのコーヒー豆を作ることができて嬉しく思います」。
これからも、老若男女が気軽に訪れることができる“喫茶店”にこだわり続けたいと尾藤さん。「那古野を思う地元の人たち、いろいろなところからこの街に遊びにくる人たち、どんな人たちがどの角度で交わっても形になる。これからも伸びしろが期待できるこの街で、店のスタイルは変えずに歴史を守り、新たな歴史をともに刻んでいきたいと思います」。
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- 喫茶ニューポピー
きっさにゅーぽぴー - TEL : 052-433-8188
住所 : 名古屋市西区那古野1-36-52
営業時間 : 8:00~18:00(金・土は〜22時)
定休日 : 不定休
- 喫茶ニューポピー