旬魚
すし和
奇をてらわず
旬の魚介にこだわり
真心を込めて握る
築90余年、モダンな雰囲気に再生させた本坊筋にある歴史ある建物。扉を開けた瞬間、カウンター越しに飛び込んでくる見事な坪庭の景色に目を奪われる。「雨の日や夕暮れ時の風景がまた一段といいですよ」と声をかけてくれたのは店主の小野田和明さん。ここ『旬魚 すし和』は、築地市場の場外にあった有名鮨店や京都のおばんざい屋で腕を磨いた小野田さんの店だ。東京・世田谷で鮨店を営んだ経験を持つ小野田さんが名古屋で店を出すため、店舗探しに費やした時間は約2年。あきらめかけていたときに「いい物件がある」と声がかかったのがこの場所だ。緑区にある『三好雀』という和菓子店が実家の小野田さんは「名古屋で育ちましたが、那古野のことは知りませんでした。最初訪れたとき、京都の祇園のような風情あるところが面白いと思いましたし、歴史ある場所でこじんまりやりたいという希望とも一致していました。加えて、この庭に惚れ込んでしまったこともあり、この場所で店がオープンできることが決まった時は本当に嬉しかったです」と話す。

「夏はマコガレイ、冬はヒラメといったように旬の魚にこだわった店にしたかった」と語る小野田さん。ネタは名古屋市中央卸売市場と柳橋中央市場に足を運び、東海三県のものを中心に納得したものだけを仕入れる。「“早起きは三文の徳”と言いますが、毎日2つの市場に足を運ぶことで魚のことをより深く知ることができますし、店の人と仲良くなることでいい魚を教えてくれたり、妥協せず自分が納得のいくものを仕入れることができたりと、いいことずくめなんです」。魚介同様に、米は「粒が大きく、粘りが少ない」岐阜県産のハツシモの古米、合わせ酢には厳選した米酢と赤酢を独自でブレンドしたものを用い、シャリにもこだわる。

感謝の気持ちを忘れず
那古野の発展に
貢献していきたい
オーダーは、おまかせにぎりの数により値段が異なる2種類のコースのみ。例えば三河産のあおやぎなら、海水と同じ濃度の塩水でゆっくり茹でていくことでコリコリの食感にするなど、その日仕入れた魚介の持ち味を最大限に引き出す調理法で仕込んだネタを、味の濃淡に気を配り提供する。選りすぐりのマグロや淡路の釣り鯵など、一つひとつのネタが大きめなのは「しっかり鮨を食べたと満足して帰ってもらいたい」という小野田さんの思いから。また、先に食べたいネタがあればコースの流れに関係なくその要望に応えるほか、内容も「握りを少なく、あとはお刺身で」などのようにカスタマイズできる築地スタイルで臨機応変に対応。ここには「もともと江戸前寿司は、せっかちな江戸っ子が短時間で空腹を満たすことができるよう、屋台で提供していたもの。今では、店主体で畏まって食べる敷居の高さを感じることが多いと思いますが、うちでは気兼ねなく存分に鮨を楽しんでもらいたい」との思いも込められている。

日本酒は、「キレがあり、余韻があるか」に重きを置いた純米大吟醸、純米吟醸、純米酒から厳選したものを用意。気さくで話術に長けた小野田さんとの会話を楽しみながら、鮨やおばんざいに合うベストな1杯を提案してもらうのも一興だ。
「今までゆかりのなかった那古野の地に店を構え、宣伝はしていなかったのにも関わらず多くのお客様に足を運んでいただけているのは、近所のお店の方々がお客様をご紹介くださっているから」と話してくれた小野田さん。「これには感謝の気持ちでいっぱいです。この御恩に報いるためにもこの地にしっかり根付き、各店舗の方々とコラボするなどして、那古野を精一杯盛り上げていきたいです」。

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- 旬魚 すし和
しゅんぎょ すしかず - TEL:080-9525-3176
住所:名古屋市西区那古野1-23-9
営業時間:17:00~23:30(LO23:00)
定休日:月(月が祝日の場合は営業)
- 旬魚 すし和